2007年10月23日

オーディオの中のデジタル、カルトに関する短い随想

−デジタルオーディオ: HDMIを一例として

HDMIは、従来のSP/DIFよりもはるかに高速のデータ伝送を行っています。その分、ケーブルやコネクタ接合部でのインピーダンス不整合の影響をより強く受けるものと推測されます。
HDMIでは、4ペアの平衡ケーブルが使用されています。その内、3ペアはデータ用、1ペアはクロック用に使用されています。全て差動伝送で伝送されます。
クロックがデータから独立している点と差動伝送が使用されている点、でSP/DIFよりも素性の良い伝送方式と言えるのですが、如何せん最大クロック340MHz, 最大伝送データ10.2Gbpsと、SP/DKIFの2桁ばかり上のデータと周波数を扱うので、その苦労は並大抵ではありません。
まず考えられるのが高周波ノイズ対策です。これについては端緒に付いたばかりで、今でもHDMI用のノイズ対策デバイスが発表されている状況ですから、これの音への悪影響が無視できるレベルまで減少するにはまだかなりの期間が必要と考えられます。
また、ver1.2までとver1.3では、ケーブルに要求される規格もまた異なっています。
更に、340MHzまでのクロックをピュア・オーディオを満足させるような高精度で出力する事に関してはこれからの課題でしょう。

では、HDMIでオーディオ信号を送る利点とは何でしょうか?
SP/DIFで送る事の出来たデジタル信号は、サンプリング周波数96kHzまでLPCMと、AAC,Dolby digital等の圧縮された多チャンネル信号しかありません。BD等の発売により、リニアPCM5chやTrue Dolbyなど、より高速のデータ伝送と著作権保護を考慮した規格が必要となりました。将来を考えると、SP/DIFには不足しているものが多いのです。
また、現状のままで良い場合には、ほとんどの機器ではSP/DIFをHDMIと共に付けていますので影響ありません。(PS3ですら、光ながらSP/DIF出力はあります)

HDMIは、差動伝送を行っていますので、隣接ケーブルからのノイズの飛込み等の影響は極力抑えられています。
ケーブルに関しては、最大10.2Gbpsのデータを扱うので太くすれば良いというものでもありません。
それ以上に、こうした高速データを扱う以上、ケーブルの作りやコネクタとの接続処理が雑な場合には、インピーダンス不整合による信号劣化が起きると考えられますので、こちらの方がより問題となるでしょう。
データは一応簡単なエラー訂正を行っているようですが、クロックに関しては、こうしたケーブルの不備によりジッターなどが発生する可能性はあります。

ただし、HDMIは元来、映像デジタル信号伝送用に規格が作られたものです。
HDMIは、その目的に対しては、素晴らしいとは思いませんが、それなりによく出来た規格であると思います。
余った帯域に音声デジタル信号を載せて利便性を向上させるとの考え方も理解できます。
しかし、オーディオ専用として作られた規格ではありません。音声データ伝送には様々な妥協があるのも当然でしょう。
決して、オーディオの素晴らしい未来のために作られた規格ではありません。
そして、現在のようにオーディオのパイが小さくなっている現状では、SP/DIFの欠点を見直した新たな伝送規格を立ち上げるのは容易ではないでしょう。
理想的には、全社横断的な団体を作って規格を制定する必要があると思われますが、現在のオーディオ業界でそのような事が可能なのか、ちょっと疑問を抱きます。

ちなみに、HDMIのSpecification Documentはネット上で公開されて、誰でもDLできるようになっています。
それをきちんと理解してから、HDMIの欠点なりを批判するならば、耳を傾けてもらえるでしょう。

−オーディオの中のカルト

コンデンサー一つで音が変わる事、測定に出ない対策で音が変わることは経験していますので、理解できます。

しかし、何かを発言する前に「判っている事」と「判っていない事」と「知らない事」の区別はきちんとつけるのが宜しいのではないでしょうか。
中途半端に技術を理解している(と思っている)方は、「判っていない事」と「自分の知らない事」の区別が往々にしてついていません。
理屈に合わない(と思う)=未知の事実、ではなく、理屈に合わない(と思う)=単なる無知、である場合もある事(それがほとんどでしょう)を忘れないようにしなくてはいけません。
知らない事は恥ずかしい事ではありませんが、自分は全てを知っていると勘違いしたまま「従来の理論の不備を指摘」している人をみると、痛い人だなぁと思う事があります。

デジタル機器とは言え、最終的な出力は「音」ですので、全体的な系の中で判断しなくてはなりません。
トランスポーターが動作しているときには、デジタルデータだけを出力しているわけではありません。
正常に動作している場合でも、データ読み取りのための制御回路や読み取ったデータの信号処理回路からのノイズ、ピックアップのサーボ系を代表とする機械的制御のための消費電力変動など、さまざまな悪影響を外部に撒き散らしています。
こうした悪影響を排除するために、トランスポートをシールドで囲ったり、デジタル系とアナログ系の電源を別にしたりと対策はしていますが、所詮は一筐体の中では根絶する事は不可能でしょう。
posted by とのじ at 21:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | オーディオ
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