2007年02月23日

通信ネタ二題

其の壱
AT&Tが苦闘する通信・放送融合の技術ハードル【コラム】
 米ウォールストリート・ジャーナル紙は1月末、AT&TのIPTV「U-verse」が技術的な問題から頓挫していると報じた。光ファイバーと ADSLを組み合わせた同社のU-verseは、本格的な広域IP放送サービスのお手本として各国から注目されてきたが、米通信業界内では技術面での困難が以前から噂になっていた。(小池良次の米国事情)

AT&Tの失敗は当然と言えるでしょう。
まず、光はともかくADSLのような物理的速度の不安定な回線を使って、ストリーム映像サービスをしてしまったこと。これでは、途切れるとか切り替えが遅い、と言った苦情が出て当然です。これが失敗其の壱。
また、IPを使用した閉鎖型放送形態とのことですので、IPマルチキャストを使用しているのでしょうが、これは実は現在ホットな研究テーマでして、効率的な配信方法を巡って様々な提案がなされている状態です。そのような未完成な技術を使ったところが失敗其の弐。
研究所を持っていないAT&Tは、かつての伝からアルカテル・ルーセントを選択したのでしょうが、こうした既存の電話メーカーから派生した通信機器ベンダーはIP系には弱いのは常識です。むしろ、シスコなどを選択したほうが巧く行っていた可能性があります。機器ベンダー選択ミスが失敗其の参。
以上です。
それから、この筆者はHFC(Hybrid Fiber Coax)について、勘違いしていると思われます。HFCとは、適当な分配点までは光Fiberを使った伝送を行い、最後に各家庭に配信するルートはあくまで同軸ケーブルです。これにより、少なくとも分配点までは良好な品質の映像が送信されることが期待できます。
電話会社にとって、高価な光ファイバーを自前で整備せずに、従来の電話線よりは広帯域なアクセス回線を手に入れる事ができる利点があります。CATV会社にとっては、基幹網を電話会社が整備してくれるので、末端の分配点まで高品質な光ファイバーで送信できる利点があります。


其の弐
ネットワークはintelligentであるべきか、stupidであるべきかとの議論はこれまでずっとやられて来ましたが、結論はでていません。ただ、以下のような勘違いをしている人もいるようです。
どんな用途にせよ、インフラはひたすら高速大容量化を進めて、使い方はもっと上のレイヤーで工夫する今のネットの体制を続けた方が社会全体として効率的だということはすでに研究者の間では結論が出ている。
管理型ネットは虚弱になる(要登録)より

この部分は、「帯域管理したネットワーク(intelligentなネットワーク)でも、帯域管理しないネットワーク(stupidなネットワーク)でも、大容量化を進めた極限ではネットワーク利用効率は変わらない。それなら管理の楽なstupidなネットワークの方が良い」と勝手に翻訳しました。上記では、どうも内容がはっきりしないので。
この結論は正しいです。その意味では「研究者の間では結論が出ている」は正解です。ただし、これは通信キャリアからは見向きもされませんでした。
理由はこの結論の前提にあります。それは「ネットワークの帯域は無限に増加していく。そして、その極限で上記のような結論が成り立つ」と言う物です。
これでお判りでしょう。上記の結論は「机上の空論」に過ぎないのです。
実際のネットワークは、経済的・技術的要因により、提供帯域にどうしても制限が出てきます。当たり前の事です。そうした制限の中で帯域を可能な限り有効利用しようとするのが、intelligentなネットワークなのです。
研究者はそうした経済的・技術的要因による帯域の制限はどこに来るのかは判りませんから、取り敢えず「帯域は無限に拡大する」と仮定して研究します。それはそれで意味のある事ですが、それをそのまま現実の世界に当てはめる事はできません。
この様に、学者の研究の結論を引用する場合には、「どのような事が前提となっているか」を良く確認しないととんだ赤っ恥をかく事があります。
ご注意ください。
posted by とのじ at 12:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | 情報通信
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